第1話・「あなたに抹消!」
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それはインベイジョン発売直後に起こった。
平成12年の10月。我々はまだ誰もマジックをやっていなかった。
Mackyが「マジック:ザ・ギャザリングというカードゲームをやろう!」と言い出したのが、我々渋谷系デュエリストのマジックとの出会いだった。
それまで全然マジックを知らなかったMacky、怠惰大元帥、やまゆー師の3人は渋谷にあるMackyの家に集まった。
カードは怠惰大元帥がショップに寄ってまとめて購入した。
知識の無い怠惰大元帥はとりあえず、エクソダス、ネメシス、プロフエシー、インベイジョンのパックとクラシックの小箱をそれぞれ幾つか買って来た。
それを3人で分け合ってさっそく3人対戦を始めたのだ。
ともかくルールも全然わからない。正式なルールブックも無く、入門書と首っ引きだ。
スタックの概念も分からず(今でも怪しいが)、当時最新ルールのキッカーの解釈も間違っていた。
我々のカードへの評価も今とは違っていた。マジック黎明期には、誰も本当に強いカードを知らなかったのと同じようにだ。
打ち消しやドロー強化など知らず、ライフ回復こそが重要だと思っていたりしたのだった。
ともかくむちゃくちゃ、攻撃も防御もデタラメ。
そんなゲームの中で、怠惰大元帥とMackyは、やまゆー師の持つ1枚のカードを恐れていた。
それはそれは恐ろしい、圧倒的、最終兵器的な最強カードだった。
いつプレイされるのか!?2人はビクビクしながらゲームを続けた。
そして…
2戦目くらいの頃だっただろうか、ついにやまゆー師の手から、その恐怖のカードが放たれた!
「抹消!」
それはインベジョンの強力な全体除去呪文。
- 抹消 Obliterate 6赤赤 ソーサリー
- 抹消は打ち消されない。
- すべてのアーティファクトと、すべてのクリーチャーと、すべての土地を破壊する。
- それらは再生できない。
それを…
「Mackyに抹消!」
………
………えっ?“Mackyに”? Mackyだけに?
というのは今だから言えること。
みんな知っていた。
エンチャント(場)以外のパーマネント全てを破壊する威力を。
でもみんな知らなかった。
「すべての」という言葉の意味を。
今ならみんな知っている。
「すべての」は相手も自分も指すということを!!
でもその時は知らなかった。
知らなかったんだもん!(キイノモン口調)
ガサガサと、寂しく自分のパーマネントだけを片付けるMacky。
そうです。
この時の「抹消」は核兵器に匹敵する、一方的な大量破壊兵器だったのだ!
8マナと重かったから、そうそう何発も打てなかった。
それでもやまゆー師の「あなたに抹消!」の声はその後も何度か繰り替えされたのだった。
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