§第1章§     時計に目覚めた!?頃のお話


 £プロローグ
 
僕は小さい頃「ラジオから電車まで」機械とか乗り物とかが好きでしたが、時計にはそれほどの興味はありませんでした。

理由は、そのころ僕は世田谷の等々力に住んでいたのですが、家のすぐそばには「ガレージ伊太利亜」、ちょっとちゃりんこ で走ればBMW、ジャガー、ローバーなどのディーラーや外車専門のお店があちこちにあり、当時流行っていたスーパーカーも 本物が見られたからです。

また、母親が小学校の給食の栄養士をしていた関係で、小学生向きの理科の実験に使うようなセットなんかももらえたので 「小さい機械物!?」はそれで間に合ってたことも理由の一つです。

しかし、そんな僕が時計に目覚めたのは確か20歳の頃だったと思います。世の中はバブリー一辺倒!大学生の分際で男の子 も女の子もブランド物を身につけるようになったにもかかわらず、買える環境になかった僕はある1冊の本を買ったのでした。
  
それは「一流ブランド/靴・鞄・時計」という本で、ブランドの紹介とやその良さを特集した本でした。

この本を読んで、僕はそれまでの時計についての認識(時計は単なる工業製品で、高い時計は名前だけだろうと考えてました) を180°変えることになったのです。

この本を見て感動したのがIWCの「ダ・ビンチ」でした。西暦2499年まで表示可能(はっきり言って無駄かな!?
でもすごい!!!)な永久カレンダー(年・月・日・曜日)・ムーンフェイズ、1/8sec単位で測定可能なクロノグラフを機械 式ムーヴメントで動かしてる!それでいて優雅なデザイン。ちなみにお値段は当時240万円くらいだったと思います。

そして僕はダ・ビンチじゃないけど永久カレンダー(世界初の西暦1100年〜2100年までの年・月・日・曜日を記憶し
てるクォーツ時計)がセイコーから発売されており、僕は1ヶ月のバイト代のほとんどをつぎ込んで(約4万円)その時計を買い ました。その時計の名前は「プレサージュ」です。(知ってる?)

これが遊べるのは、操作は面倒だけど曜日検索ができることです。例えば自分の誕生日は何曜日?というのが検索できるのです。

また、アラームも毎日鳴るのと、1ヶ月以内の任意の日に設定できる2種類あるのがちょっと気に入ってました。

そんなわけで、僕は突然時計に目覚めてしまい、その後ひたすらオタクの道を突き進むことになるのです。


                 §第2章§    時計ブランドのお話

1.スイスの時計産業のお話

時計オタクの人は良く知ってると思いますけど、現在のスイスの時計産業は日本の自動車工業のように分業制が一般的だったりし ます。つまり、外側のケース専門、中のムーブメント専門、文字盤専門・・・etcと分かれています。

そしてこれら時計産業の集まりとしてSMHグループがあり(属さないメーカーも多数有り)、SMHグループの時計メーカーと してはオメガやスウォッチ、ムーブメントメーカーとしてはETA(バルジュー)などがあります。
  
このような産業構造のため、一般的に知られている有名ブランドの時計も、中のムーブメントから文字盤やケースまで全てを製造 しているのはほんの一握りだけなのです。

但し、ちゃんとした時計ブランドは、例え社外からムーブメントを調達しても、一度全部バラしてから再加工(精密仕上げ)し、組
み付けてます。(ALPINAみたいなイメージです)


2.時計メーカー、及び時計そのものに対する僕の考え方
  
先に断っておきますが、このコーナーで言う「時計」とは全て「腕時計」すなわちウォッチを指します。クロックではありません。  

クロックとウォッチとは僕からすると世界が違うものなので・・・悪しからず。 

 
さて、僕の考えとしては、優れた時計メーカーは自社でムーブメントの開発・製造を行うことができ、その技術・デザインともに 工業製品の枠を越え、芸術品の域まで達している、ことが前提となります。

また、例え
他社のムーブメントを使用していても、そのまま使用するのではなく、そのメーカー独自の機構を付加したり、再加工 や再調整をするブランドも、優れた時計メーカーだと思います。
  
一方、時計に対する評価は簡単です。

いかに人間の知恵を盛り込み、手間暇かけているか? ということができます。
  
時計には人間の知恵が詰まってます。それは、ブレゲなどの天才時計技師は天才技術者なのではなく科学・数学・気象など、いろ いろな分野に対し広く知識を持った天才であり、そのような知識を持って初めて、時計を作ることができたのです。

ですから、コンピューターや産業機械が発達した現在でもトゥールビヨンやミニッツリピーターなどを組み合わせた超複雑時計を 設計したり組立てできるのは世界でも10人くらいと言われています。

(実際、超複雑時計を作っているメーカーって限定されてるし、また、例えパテックフィリップでさえ、特殊な時計はフランク・
ミューラーのような天才に製作を依頼しています。)
  
例えば、「ミニッツリピーター」。知ってるかな?
  
ミニッツリピーターとはその名の通り、時(時、分)を時計に内蔵されたチャイムを鳴らして知らせる機能で、昔、まだ街灯が普及 してない頃、暗闇でも時間を知るために開発されたものです。
  
このミニッツリピーターを作製するためににはどの様な知識が必要でしょうか?
  
例えば、金属の材質。当然、チャイムの音は重要です。ただジャリジャリ鳴ればいいってもんじゃありません。いかに澄んだ綺麗な 音色を出すか、このためチャイムをゴングの材質、大きさ、形状、そしてハンマーもしかり・・・、その設計、また、現時刻を正確に知 らせる(例・・3時30分・・長い間隔でのチャイムが3回鳴る、次に短い間隔で2回鳴る・・・注:分の方は15分単位でしか鳴らない) ための機構(僕には何でこの様なことができるのか未だに理解できてません)を機械で全て構成するのはものすごい綿密な計算が必要 です。

ちなみに、現在このミニッツリピーター機能を持った時計は通常数百万円以上します。


(※注意・・・以下、僕の個人的な感想や価値観が随所にちりばめられてますので、それを前提に読んでね。)
 
じゃぁ、具体的には?


3.時計メーカー(ブランド)のお話

 オメガ(OMEGA)

基本的にはほとんどのムーブメントがバルジュー製です。ごく一部の銘柄(スピードマスタープロフェッショナル=尽きに行った時計 ですね)は自社製ですが。

価格と品質とのバランスがGoodだし知名度も高いので、買って損はないでしょう

SMHグループの中核をなしてます。
 

 ブライトリング(BREITLING)

機能を含め、ブライトリング社はデザインがメインです。中身はほとんど(全てかなぁ?)社外です。
(とある雑誌では「ケレック」って書いてありました)
  
飛行機のパイロット用ウォッチなど、イメージ作りが上手く、デザインはかっこいいんだけど、機械的にはあまり価値はないかも・・・
  
機械的にはそれなりに機能はありますが、航空時計(計算尺とか付いてる)に特化している分、一般的な!?時計おたくはそれほど興味 を持たないかもしれません。 


 ロレックス(ROLEX)

「丈夫」が命。とにかくここの時計がえらいのは、ムーブメントの複雑やデザインではなく、「実用性」です。
日本では時計の王様のようなイメージで見られがち(何せマークは王冠だし)ですが、オーソドックスな機械式ムーブ(クロノグラフ や永久カレンダーなどの複雑なものではない)を昔から作ってます。
  
腕時計の歴史から言っても、オイスターケース(金属塊をくりぬいてケースを作製し、ねじ込み式竜頭やスクリューバックを採用)や カレンダー早送り機構(日付変更の直前になって表示が変わる)が取り上げられると思いますが、ムーブメントでは取り立ててすごいも のは作ってません・・・但し、誤解のないように言えば、昔から作ってるムーブメントに改良に改良を重ねて現在に至るので、その信頼 性はピカイチです!

つまり、実用時計の中でのKingです。


昔(’50年代以前)はデザイン的にも機能的にもかわいかったり、綺麗だったり、いろいろな時計を製造してたんですがねぇ。

でも、ここは数少ない「自社製ムーブメント」を多く使用しているから、機能的にはたいしたことなくても「がんばってるなぁ」と思
います。

ちなみに、多くの人が憧れるデイトナ(僕も憧れてたりするのだぁ)のムーブメントは社外(ゼニス)製のエルプリメロが基本ですが、

ロレックスバージョンに改造・調整したものを使用してます。


(具体的には、36000振動/hのハイビート仕様から18000振動/hへとディチューン!?し、耐久性をUPさせてます。ハイビートは時間
精度が出やすいですが、軸受けなどの摩耗が早いので、耐久性を重視するロレック スでは振動数を落とし、且つ時間精度が出るよう再 調整してるんですねぇ。→やっぱりそれなりに手間はかかってるのです。
  
僕の結論としては、ここはパテックやバセロン、ブレゲなどの時計の芸術品を作ってるわけではなく、「使ってナンボ、耐久性重視、 実用性重視」の時計を作っているブランドです。 (だから時計の「王様」なくて、時計の「労働者」かな?・・・にゃは♪)


 パテック・フィリップ(PATEK PHILIPPE)

時計おたくだったら、きっとここが「時計の王様」として一番に挙げるでしょうね。
一番安いものでも100万円超・・・庶民ではおいそれと手が出せません。
  
でもね、ここの時計は芸術品なんです。絵とか書とかと同じようなものですね。世界中にマニアがいます。ギネスブックに掲載されてい る世界で一番(値段が)高い時計(4億円強・・・でもつい最近更新したようなニュースを聞いた)や、一番複雑な時計(89の機能を持つ) は当然のように「パテック・フィリップ」です。

ちなみに、名前の由来は(ありがちですが)パテックさんとフィリップさんが共同で始めた会社です。

しかし、・・・僕のなじみのアンティークウォッチショップの情報だと、何だかんだで、やっぱり最近(特に80年代以降)製造された ものは、コスト削減の影響が出てるそうです。今でも「手作り」している、とは言っても、機械化は進行してて、最近工場も新しく建てた らしいです。パテックフィリップといえども、昔ながらのネジの削り出しからムーブメントの組立て、調整、文字盤の作製など、全ての工 程を人間が行うことはないみたいです。残念ですけど。(それでももちろん、他のメーカーよりは遙かに手間暇かかってますよ!)

具体的には、文字盤を見れば一目瞭然です。
 
例えば50年代に製造された96(型式)の文字盤などは”PATEK PHILIPPE”の文字が浮き出ているように見え、更に文 字盤全体に何とも言えない綺麗なツヤと透明感、奥行感があります。現在の96タイプの時計では文字は印刷、文字盤全体のツヤもあまり パッとしません

何故でしょう?

それは、先に話した50年代の時計では、この文字は職人さんが筆でエナメル塗料を重ね塗りして立体としています。文字盤のツヤも同 じようにエナメル塗料を筆で重ね塗りしているからこそ生まれるものなのです。とにかく文字盤だけでも確か仕上げまで3ヶ月以上かかっ てます!(普通の3針式&バーインデックスなのに・・・)
  
だから、もし96タイプのパテックの時計を買いたい人は、アンティークの方が絶対価値がありますよぉ!

現在製造されている96タイプでも百数十万円するけど、機械的にも仕上げ的にも昔の方がいいかもね!?


永久カレンダー+クロノグラフ=1400万円、の時計を買うんだって言う人は別ですけど・・・。


 IWC(International Watch Conpany)

僕が好きなブランドの一つ。
  
ムーブメントは、ジャガー・ルクルト製(を買ってきて、改造・調整してる)が多かった様な気がします(機能調べたらバルジューのム ーブも使用してるようです・・・ダ・ビンチはバルジュー7750の改造品でした!)、なお自社でもムーブメントを作ってます。

ルクルトのムーブメントは一級品!それを更に改造(無い機能を追加することが多い)しちゃうし、自社でコンプリケーション(複雑時 計・・・永久カレンダー+クロノグラフ+トゥールビヨン+ムーンフェイズとか)も製造できるんだから、技術力は高いです。

ただ・・・ここの時計には一つだけ欠点が・・・それは文字盤です

ポートフィノみたいなシンプルな時計はそれでもいいけど、コンプリケーションみたいに2500万円とか4000万円する時計まで、
文字盤がシンプルなのは残念!!

技術力勝負のブランドです。(何てったって、スイスの時計メーカーで唯一、時計学校以外でも公式に時計職人を養成する資格を持つメ ーカーですもん。)

ちなみに、
ここんちの時計はクロノメーター規格とかには無頓着ですが、なまじその辺のクロノメーター規格の時計より時間精度は上です

だって、ポートフィノを数年前に量販店で買ったとき、その時計はそのまま日差3〜5秒で動いたんだから!すげぇ〜たまげた。

ちなみに、翌年買ったブローバのトリプルカレンダークロノグラフ(中身はバルジュー7751)は日差30秒〜50秒でした。
 (これが普通です。)
 

 ジラール・ペルゴ(GIRARD PERREGAUX)

ジラールペルゴ(以下GPと略)は最近がんばってます!自社でムーブメントを開発してるんです。

90年代に入ってから、3ブリッジトゥールビヨンなどの複雑時計も製造するようになり、かなりおもしろくなっていたのですが、数年前
にトノー(樽)型のクロノグラフを手頃な値段で発表したり、フェラーリーF50(F40もだっけ?)のオーナーに渡されるフェラーリー のマークの入ったクロノグラフを提供したりと、何かと話題が豊富なブランドです。

残念なことに、すごくがんばってるのに保守的な時計オタクは、依然として中堅メーカーとして見ているようですけど・・・。(僕もで〜す)

これって車に例えると、ワーゲン&アウディみたいな感じかな!?(あくまでも例えですよっ!)


だって・・・ねぇ、BMWと比較するとさっ、ビーマーのみんなは「やっぱりゴルフとかA4とかって・・・」ってならない?

作りとか良くなってても。

まっ、とにかく、価格と作りとを考えたら、オメガと同じかそれ以上にいいと思います!
 
  
・・・さぁ、少しは各ブランドの雰囲気っちゅうかポジションみたいなものが分かりましたでしょうか?

とりあえず今回ははここまで。 つづきは次回ね! じゃぁ、またね。      

※もし、記述に間違いなどがありましたらメールでご連絡下さい。訂正します。(記憶で書いてるんで、ちょっと不安なのだぁ)